ホーム >> ニュース、出版物など >> ニューズレター

ニューズレター

搜尋

  • 年度搜尋:
  • 專業領域:
  • 時間區間:
    ~
  • 關鍵字:

最高裁、進歩性の判断は「could-wouldアプローチ」を採用し、「補助的判断要素」を考慮すべきと判示



 最高裁判所は、20241120113年(西暦2024年)度台上字第459号判決において、専利(特許、実用新案、意匠を含む)の進歩性判断に関する以下の重要な原則を明らかにした

 

1.could-wouldアプローチ」の採用

 

最高裁は、上記判決で、以下のように述べている。個別案件における進歩性を判断する場合、発明を個々の構成要素やステップに単に分解し、それらを従来技術と機械的に組み合わせたり寄せ集めたり対比するだけではできない。従来技術に基づいて当該技術の熟練者が容易に発明を完成させることができるかどうかを判断するには、「試みる明白な意欲がある(当業者を促した可能性がある)」と「実行する明白な意欲がある(当業者を促したであろう)」(could-wouldアプローチ)を区別・評価する必要がある。言い換えれば、進歩性判断は、その発明を成し遂げる可能性が理論的に存在し得るかだけではなく、具体的な事例において、当該技術の熟練者が研究開発に従事し、成功させる動機付けとなるインセンティブ、具体的な事実根拠、又は奨励が存在するかどうかも重要なのである

 

本件原告は、被告が証拠として提出した3つの従来技術文献(引用文献)に対し、以下のように主張した。「原審は、乙第1号証の異なるタイプのステートマシンの特徴を機械的に抽出し、それを乙第2号証及び乙第3号証と組み合わせただけでは、係争特許の進歩性を否定することはできない。また、乙第2号証は3つのICを必要とするので、そのうちの2つのICを無視して乙第2号証を乙第1号証や乙第3号証と組み合わせることはできない。さらに、乙第3号証は、「アセンブリ言語」でコーディングされなければならないICであるが、係争特許の明細書及び図面には、その動作原理に「アセンブリ言語」が含まれていないことが開示されており、さらに、アセンブリ言語の命令が除外されることも明らかにされているため、乙第3号証は従来技術としての適格性を有しない。」これらの主張について、最高裁は、原審においてさらなる審理が必要であるとした

 

2.「補助的判断要素」の考慮

 

「補助的判断要素」に関して、最高裁は、以下のように述べている。いわゆる「当該技術の熟練者」とは、仮想の人物のことである。また、進歩性判断の基準時から侵害訴訟の審理までの期間が長いことが多、実際の判断に困難が生じ、主観的・恣意的なバイアスが生じやすいことから、客観的事実に基づき当該判断の妥当性を高めるべきである。進歩性審査における補助的判断要素は、発明と市場との関係に基づいて、発明が予期せぬ効果を奏したか、長年存在してきた課題を解決したか、技術的偏見を克服したか、商業上の成功を収めたかなど、技術的貢献の程度を判断するものである。当事者が補助的証拠書類を提出し、それが進歩性の審査について説得力があり、適切かつ客観的であると認められた場合、特許出願時の状況や実態を可能な限り再現するために取調べ・審理が行われるべきである。

 

本件原告は証拠を提出し、係争特許は20年以上前イギリス、アメリカ、中国、日本などの国で登録されたこと、台湾の多数の関連業界、上場企業までが係争特許の内容を検討した上でライセンス契約を締結したこと、係争特許の技術を搭載した数十億ものICが世界中に輸出されていることから、係争特許が長年存在してきた課題を解決し、商業上の成功を収めたと判断するには十分であると主張した。これに対し、最高裁は、原告の主張が虚偽でなければ、このような証拠資料は、係争特許の進歩性の判断に影響を与える客観的な事実を示すものであり、したがって、原審は、証拠の取捨選択のため、係争特許のライセンス契約の締結プロセスやその実施状況について、両当事者とともに、適切な設問を設定して上記会社に問い合わせることができ、補助的判断要素を安易に否定することはできないとした。

 

最高裁は本判決で、上記2大原則を明確にしたほか、特許の進歩性を判断する際に、「主引用例」と係争特許との相違を考慮すべきであると改めて述べ、最高行政裁判所109年(西暦2020年)度判字第355号及びその他の判決の趣旨を踏襲した。同裁判所は、いわゆる「最も近い従来技術」(主引用例)は、研究開発のための最良の基礎を提供する「単一の引用文献」であり、発明者は、その中で開示された技術情報に基づいて研究開発を行い、発明の完成に寄与する可能性が最も高く、これと特許出願に係る発明の技術内容との相違点を対比することにより、従来技術を機械的に寄せ集めたり組み合わせたりして進歩性判断がなされ、後知恵による判断の誤りを避けることができると述べた。同裁判所は、原判決には進歩性を判断するための主引用例と審査原則が欠けており、法令の不適用、法令適用の誤り、理由不備があると指摘した。

回上一頁