ニューズレター
行政事件第一審で提起されなかったクレームの文言解釈の主張は上告審では提起できない可能性がある
専利(特許、実用新案、意匠を含む)請求の範囲(クレーム)はその文言によって特定されるため、クレームの文言解釈は、専利紛争における専利の有効性判断や侵害成立の可否といった重要な争点と密接に関連しており、行政訴訟でも民事訴訟でも、しばしば当事者間の攻防の焦点となる。しかし、行政事件第一審でクレームの解釈について争わなかった場合、上告後も関連する主張を提起することはできるのだろうか。この点に関して、最高行政裁判所は否定的な見解を採用しているようであり、その下した112年(西暦2023年)度上字第824号判決(判決日:2024年6月6日)には以下のように判示されている。「行政訴訟法第254条第1項によれば、当裁判所は、高等行政裁判所の判決の確定した事実を判決の基礎としなければならず、当事者は、上告審において、新たな攻撃防御方法、又は新たな事実若しくは新たな証拠を上告理由として提出してはならない。上告人は、...原審において、係争実用新案のクレームの文言又はその解釈についていかなる疑義も主張しなかったが、当裁判所に上告した後、上告人は、原審がクレーム解釈に当たり最も広範な合理的解釈(broadest reasonable interpretation)を行わなかったと主張をはじめ、これは新たな攻撃防御方法であって、上記の規定及び説明によれば、当裁判所は、これを審理する余地はない」。
また、2023年1月12日に改正され、2023年2月15日に公布された知的財産事件審理法(中国語:「智慧財産案件審理法」、以下「現行知審法」)は、2023年8月30日に施行された。上記事件は、現行知審法の施行前に、行政訴訟の第一審である知的財産裁判所に係属中であったため、現行知審法第75条第3項[1]により、改正前の知審法に従って審理されるべきである。しかし、旧法と比較して、現行知審第30条には、「裁判所は、専利権により生じた民事訴訟事件の審理において、クレームの解釈に争いがあるとき、適時に申立てにより又は職権で専利権の文言範囲を特定し、かつ、適度に心証を開示することが望ましい」との規定が新設され、同法第71条第1項にも「第29条~第40条、第46条、第51条及び第52条の規定は、知的財産に係る行政事件に準用される」と規定されている。したがって、現行知審法によれば、民事訴訟でも行政訴訟でも、裁判所は職権で専利権の文言範囲を特定する余地があるようであるが、この新法の規定が最高行政裁判所の上記見解に影響を及ぼすかどうかは、今後注目される点である。
[1]知的財産事件審理法第75条第3項は、「本法の2023年1月12日付改正条文施行前に、すでに裁判所に係属している知的財産に係る行政事件については、本法改正施行前の規定を適用する」と規定している。